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日本で最初に発行された切手の図案は、当時流通していた紙幣に描かれた「竜」の部分を使用したもので[竜文切手(通称)]と呼ばれています(翌月には貨幣制度が変わり[竜銭切手]となります)。精巧な手彫りによる原版を使用して刷られました。

戦後、切手図案の多様化、印刷技術の飛躍的な発展により多色刷りの美しい切手が次々と登場します。なかでも昭和23年(1948)に制定された「切手趣味週間」の記念切手として発行された「見返り美人」(原画は江戸時代の菱川師宣)の発行により、切手人気が一気に高まりました。子供から大人まで、「切手は小さな芸術品」として趣味の王様と呼ばれるようになります。67×30mmの大型縦長のスリムな切手である「見返り美人」に描かれた女性の後ろ姿は、当時流行の帯の結び方と、菊と桜をあしらった見事な刺繍の着物を見せるためとも言われています。

@桜切手 日本の切手に初めて「花(植物)」の図案が使用されたのは、明治5年(1872)発行の「桜切手(通称)」と呼ばれる切手だといわれています。切手の四隅に桜の花を配したものでした。図案の中央には初めて「郵便切手」という文字と「菊花紋章」が描かれました。この桜切手は、明治9年(1876)に「小判切手(通称)」が発行されるまでの間、和紙を洋紙仕様に変更したり、改色を繰り返しながら発行が続けられました。
■種別=普通切手 ■額面=5厘から1円まで多種■発行期間=明治5年8月23日〜明治9年3月19
A菊切手 産業革命を経て、原版・印刷機・印刷技術など新技術が導入され切手の新時代を開いた「小判切手(通称)」に続いて明治32年(1899)から発行されたのが「菊切手(通称)」です。図版の中   央には大きく「菊花紋章」が描かれています。菊は桜と共に日本の国花とされ16花弁の菊は天皇の紋です。この「菊花紋章」は、昭和22年(1947)に使用廃止されるまで、日本国内で発行され  た全ての切手に入れられています。
■種別=普通切手 ■額面=5厘・1/2銭・1銭・11/2銭(2種)・2銭・3銭(2種)・4銭・5銭・6銭・8銭・10銭・15銭・20銭・25銭・50銭・1円の18種 ■発行期間=明治32年4月1日〜明治40年8月20日
B昭和切手 昭和の時代になり、普通切手にも多くの画期的な図案が使用され始めました。景色や観光名所に加えて軍人の肖像なども登場。昭和15年(1940)2月1日に発行された20銭切手には「富士と桜」が描かれています。これは花切手というよりも風景切手に分類される事が多いようです。主に重さ20gまでの船便(外信書状用)に使用されました。また、10円切手には「梅花模様」が図案化されています。文様の出典は三島大社収蔵の蒔絵硯箱。切手の全面に「花」の描かれた切手としてこの「梅花模様」が最初ともいわれています。発行当時に郵便での10円額面適応種別は無く、主に局内の電信・電話料金の納入用などに使用されました。
終戦後、多くの切手が進駐軍の指導によち「追放切手」として使用が禁止されましたが、この2種の切手は追放対象外となっています。
■種別=普通切手 ■額面=10円 ■発行期間=昭和14年9月21日〜

C司法保護記念切手 昭和22年(1947)5月3日に日本国憲法が施行されたことを記念して発行された2種の切手は額面50銭切手に「母子と国会議事堂」が、額面1円切手には「5月の花束」が図案として描かれています(CA)。この2種の切手と憲法前文を(日本語/欧文)で記した記念シートも同時に発行されています(売価3円)。また、この切手は先の「菊花紋章」が使用された最後の切手として歴史的にも貴重とされています。同じ年の9月13日に発行された「司法保護記念日(戦前の司法保護デー)記念切手の図案には「スズランを持つ手」が採用されています(CB)。「幸福の再来」というスズランの花言葉に由来する図案だったと思われます。この切手に描かれた美しい女性の手の小指が少し大きいのではないかと収集家の間で話題になり、モデルとなったとされる当時の逓信省へ勤務する女性の手をわざわざ確認しに出向いたマニアもいたとか。ちなみに「司法保護記念日」は昭和27年(1952)から毎年11月27日の「更生保護記念日」に移行されました。
「5月の花束」■種別=記念切手 ■額面=1円 ■発行日=昭和22年5月3日 ■発行数=1千40万枚/
「スズランを持つ手」 ■種別=記念切手 ■額面=2円 ■発効日=昭和22年9月13日 ■発行数=三百万枚


D花シリーズ切手 現在では毎年次々と「シリーズ切手」が発行されていますが、その最初は郵便事業90年記念事業のひとつとして発行された「花」を図案にしたものでした。日本の高度経済成長期の真っ只中、昭和36年(1961)に発行されました。1月のスイセン(DA)に始まり7月のヤマユリ(DB)など各月の花が1種ずつ(全12種)順次発行され、その美しい図柄は好評を博しました。
■種別=記念切手 ■額面=10円(当時の封書20gまでの基本料金) ■発行期間=昭和36年1月30日〜同年12月1日(毎月1回) ■発行数=8百万枚〜1千万枚 ■図案=1月スイセン・2月ウメ・3月ツバキ・4月ヤマザクラ・5月ボタン・6月ハナショウブ・7月ヤマユリ・8月アサガオ・9月キキョウ・10月リンドウ・11月キク・12月サザンカ ■原画作者=前野京平/東角井良臣/丹後昭/島野武夫/大塚均/野沢保人/長谷部日出男


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