2009年9月12日(土)…稲刈り当日の1週間前に、台風11号の影響による強風で稲穂全倒という被害を負ったコシヒカリの水田。丈夫な稲穂が自慢だった財団スタッフにはちょっとショックな出来事でした。しかも、当日は秋雨前線の影響で降水確率70%。それでも春に田植えをした50名余りの「イオンチアーズクラブ」の家族が再集合してくれました。小雨の降る中での作業はなかなかはかどりませんでしたが、地元農家の講師の皆さんの指導と励ましで頑張る事ができました。途中5分ほどの休憩をとり、「さぁ、残りを全部刈るゾ」と声を掛け合ったものの雨脚が急に強くなり、とても田んぼに入れる状態ではなくなりました。やむなく雨天コールドゲーム! [和い処]の土間へ緊急避難しました。

 2009年10月4日(日)…秋の長雨が続く中、たった1日だけ訪れた快晴の当日。前日から吊り下げていた照る照る坊主の効能でしょうか。少々ぬかるんだ田んぼでしたが、秋晴れの空から降り注ぐ日差しの中での作業は順調でした。60名余りの参加者の中、幼年の子供が多い「華紋四谷カルチャー倶楽部」チームでは、毎年お父さんお母さんが大活躍です。すべての稲刈りを終え、稲束をハザに掛け終わった頃には心地良い疲れと空腹感を感じました。

 

 稲刈り作業のあとには、待ちかねたお昼ご飯です。スタッフやボランティアの皆さんが朝から準備したたくさんのおむすび(古代米/海苔&塩/柴漬&ユカリ〜等々)、具がたっぷり入った豚汁(おかわり自由!)をお腹いっぱいいただきました。食後は、花苗をみんなで鉢植えし、地元の吉川伸さんが育てて下さった西洋サクラ草と共にお土産となりました。
 自由時間には、[和い処]前の芝生の斜面でダンボールの草すべりに歓声があがり(お父さんやお母さんも童心に戻って一緒に滑りました)、散策路ではバッタやカマキリを捕まえた
 

り(虫かご持参のご家族も)、水路や調整池ではザリガニ釣りに興じました(エサを持参のご家族も)。稲刈り作業だけでなく、自然の中で汗を流し体をいっぱい使って過ごした秋の一日、帰路に就く車中ではきっとぐっすり眠ったことでしょう。ご参加頂いた皆さん、お手伝い頂いた皆さん、本当にお疲れ様でした。

 

 当財団が、イオンこどもエコクラブ(現イオンチアーズクラブ)の子供たちやご家族とお米作りを始めたのは8年前の事です。田植えや稲刈りの体験を通して私たちが毎日食べている「お米」の大切さを知り、生産者の苦労や自然の大切さを理解してもらおうと考えたものです。
 しかし、米作り体験の意義はそればかりではありません。一緒に田んぼに入る参加者の中には男性・女性はもちろん、大ベテランもいれば入園前の小さな子供もいます。こうした幅広い年齢層の皆さんが一緒になってコミュニケーションをとりながら同じ作業を行い汗を流し、共に達成感を味わう事ができる機会は他になかなか見あたりません。作業を行う中で自分が受け持った分担作業を全うすることはもちろん大切な事ですが、自分の周りや次に作業を行う人のことをどれほど思いやってあげられるか、という点もとても重要です。
  

【田植えの時】…横一列になり苗を植える時に、隣の人が少し遅れ気味だったら自分の列でなくとも植えてあげる、植える人に苗を投げ入れる時にも着水する時に泥水がはねないように、しかも取りやすい位置に投げてあげる、等間隔に植えられるように引いた長い紐を移動させる時には植えている全員が同時に進めるようにする。
【稲刈りの時】…カマで稲を刈り取ったら次に束ねる人が束ね易いように同じ向きに置く、稲を束ねる人は、それを運ぶ人が抱え易いように稲束を重ね置く、稲束を運んだ人は、それをハザに掛ける人が次々と掛け易いようにひと束ずつ手渡す…単純ではあるけれど、そこには「自分だけよければいい」とか「もっとラクをしたい」という気持ちが入り込むスキは少しもありません。

 

 田んぼに入ってしまえばどんなに小さな子供であろうと、誰かの「お手伝い」をしているのではない、ひとりひとりが立派な共同作業の一員なのです。老若男女あるいは親子がお互いの安全な作業のために声を掛け合い、教え合い、励まし合い、助け合い、讃え合う。小さな子供のこと、1時間も作業を続ければ飽きてしまったり、作業そっちのけでバッタやカエルを追い始める子供もいます。それはそれでいいでしょう。持ち場を離れた子供の分は、他の誰かがフォローしていくのですから。
 

一緒に作業をするというのはそういうことだと思います。田んぼでは、誰も怒鳴ったり怒ったりはしません。

 

 財団では、この米作り体験を、この先何年も続けていきたいと思っています。美味しいお米が稔り、親子の間や他のご家族との間に「信頼」という名の大きな実が毎年稔ります。