第14回 ススキと関東鉄道常総線

  [花鉄の部屋]第14回は、秋の西日に照らされるススキと常総線です。
タイトル= 風にそよぐ…
撮影者= 大藪啄也
撮影地= 茨城県下妻市

 関東鉄道常総線は、取手駅(茨城県取手市)から下館駅(同県筑西市)の24駅間を結ぶ51.1kmを、ほぼ鬼怒川に沿うように関東平野を走ります。路線名は沿線が旧常陸国と旧下総国に跨がることに由来します。その前身である常総鉄道株式会社が大正2年(1913年)に開通、沿線地域と共に発展した常総線は、今年の11月1日に開業100周年という大きな節目を迎えます。
 常総線ではこの佳節を控えた4年前の秋から[開業100周年記念フラワープロジェクト]に取り組み、関鉄レールファンクラブの皆さんが中心となって、今までにサクラ、コスモス、ヒマワリ、アジサイなどで沿線を「花鉄」風景でいっぱいにして来ました。加えて今年の春からは、[開業100周年記念・関鉄フォトコンテスト]を開催し、フラワープロジェクトで咲き誇った花々と常総線の「花鉄写真」を広く募りました(10月10日締め切り)。どんな「花鉄」が受賞されるか楽しみですね。

 子供の頃から鉄道が大好きだったという今号の撮影者の大藪氏は、鉄道写真家真島満秀氏(1946〜2009)に感化され、「旅情」をテーマに「鉄道のある風景写真」を撮り始めたそうです。「自分の写真を見て『旅に出たい』と思っていただけたら望外の喜びです。」と語る大藪氏のブログ[さすらいびとの子守唄]では、氏が追い求める「季節」や「光」あふれる日常の鉄道風景が満載です。
 昨年の秋の下妻駅〜大宝駅間、晴れているとはいえ陽射しが弱く霞がかった中で「煌めくススキを撮るのは厳しいかな」と感じていたところ、「程よく吹く風に救われた」という一枚。
 大藪氏が「風にそよいだ方が画になる」というススキ(芒/薄)は、動物の尾に見立てて尾花とも呼ばれ、ハギやナデシコなどと共に秋の七草のひとつに数えられます。十五夜のお月見にはお団子や、栗や里芋など秋の収穫物と一緒に飾られます。


ススキの花…白い穂は、ススキの花の集まり、黄色いのは雄しべです。秋が深まると、花は綿毛をつけた種子に変わり、風に乗って舞い飛ぶ準備が整います。間もなく種子は新天地を求めて旅に出ます。
[花鉄(はなてつ)]とは細分化されている鉄道ファンは、乗ることが好きな「乗り鉄」「旅鉄」、撮影専門の「撮り鉄」、その発車ベルや走行音のファンを「録り鉄」、駅弁を食べ歩く「食べ鉄」、女性の鉄道ファンを「鉄子」などと呼ぶことがあるそうです。そこで、私たちは各地で出会える「花」と「鉄道」が共生する素敵な風景を、勝手に「花鉄」と名付けて愛し続けることにしました。



  flower with railway vol.14