第11回 梅の花と叡山本線

 [花鉄の部屋]第11回は初春、香る梅の花越しに走る京都の叡山(えいざん)電鉄です。

タイトル=梅香の比叡山麓を下る
撮影者=中村彰彦
撮影地=京都市左京区


 叡山電鉄には「出町柳駅」と「八瀬比叡山口駅」間の8駅5.6kmを結ぶ叡山本線と、「宝ケ池駅」から「鞍馬駅」までを結ぶ鞍馬線の2路線があります。今号の長閑な趣溢れる画像は、「三宅八幡駅」から終点「八瀬比叡山口駅」間を走る叡山本線です。「八瀬比叡山口駅」からは叡山ケーブルカー〜ロープウェイ(京福電鉄)への乗り継ぎが出来ます。
 撮影されたのは叡山電鉄の車庫の目の前(!)にご自宅があるという環境に育ち、幼い頃から線路際を駆け回って遊んでいたという中村彰彦氏。
 昨年は春の訪れが遅く、彼岸間近になって漸く咲き始めた京都の梅。撮影当日はお目当てだった菜の花にはまだ早く、終着駅に差し掛かる急勾配の地点で撮影対象を急遽梅の木に変更、素敵な構図の「花鉄」を撮られました。
 車両は比叡の森の緑のラインを纏った1両編成700系(デオ720形)車両。自然豊かな比叡山ですが、とくに梅の名所というわけではないそうです。

 30年余りに亘って鉄道写真を撮り続けていらっしゃる中村氏が管理人のホームページ【線路際のピンぼけ写真館】(http://nakkacho.fc2web.com/)では、全国の鉄道の昭和〜平成に至る歴史なども見ることが出来ます。
 叡山電鉄(株)のホームページ(http://eizandensha.co.jp/)では最新の沿線画像が見られる他、観光イベントやハイキング情報が満載。なかでも運転手席から撮影された動画がアップされていて、しばし運転手気分が味わえる動画コーナーがお薦めです。
 また、叡山本線沿線には「曼珠院門跡」(修学院駅下車)、「瑠璃光院」(八瀬比叡山口駅下車)、「蓮華寺」(三宅八幡駅下車)、「金福寺」「詩仙堂」「圓光寺」(いずれも一乗寺駅下車)などがあり心静かな名刹めぐりにも最適です。
 『梅開早春』──早春になったから梅の花が咲くのではなく梅が咲くから早春。春という季節(概念)が先にあるのではなく、梅が咲く季節を春と呼び黙して語らぬ花々と共にある、そうした心持ちを古の禅僧たちは説いています。

 
 

[花鉄(はなてつ)]とは細分化されている鉄道ファンは、乗ることが好きな「乗り鉄」「旅鉄」、撮影専門の「撮り鉄」、その発車ベルや走行音のファンを「録り鉄」、駅弁を食べ歩く「食べ鉄」、女性の鉄道ファンを「鉄子」などと呼ぶことがあるそうです。そこで、私たちは各地で出会える「花」と「鉄道」が共生する素敵な風景を、勝手に「花鉄」と名付けて愛し続けることにしました。


  flower with railway vol.11