[花鉄の部屋]第7回は、鮮やかな菜の花畑を走る千葉県のいすみ鉄道です。

タイトル=春の訪れ
撮影者=新井謙太郎
撮影地=千葉県夷隅(いすみ)郡大多喜町

 旧国鉄の特別地方交通線のひとつだった「木原線」をJR東日本から引き継ぎ、第三セクター「いすみ鉄道いすみ線」が開業したのは1988年(昭和63年)のことです。相互乗り入れは行っていないものの上総中野駅で線路が繋がる「小湊鐵道線」と共に房総半島を横断する唯一の鉄道として地域住民に愛されてきました。現在、JR東日本外房線と連絡する大原駅(いすみ市)から上総中野駅(夷隅郡大多喜町)間の全14駅、26.8kmを結びます。全国のローカル線と同様、開業以来慢性的な赤字経営が続き幾度も存続の危機に瀕しますが、その都度存続運動が盛り上がってきました。
 いすみ鉄道では、社長の一般公募や訓練費自己負担で運転士を募ったり、駅名の命名権売却など廃止阻止に向けた涙ぐましい努力を続けています。
 今やいすみ鉄道の代名詞となっている全線に渡って咲き連なる春の菜の花群は、地元のボランティアの皆さんによって種まきや管理が行われているそうです。
 今号の菜の花色の車両(いすみ200型気動車)の画像は、昨年の大震災後の3月後半に東総元駅と三育学院大学久我原駅間の踏切付近より撮影されました。
 大震災の被災地に実家があり、心労を抱える友人へ向け「どんなに辛いことがあっても必ず春は来るのだよ」というメッセージを伝えたくて撮影者の新井氏はシャッターを切ったそうです。一枚の写真には誰かを勇気づけたり、心の支えになる力もあるのだと感じさせてくれます。

 いすみ鉄道では3月の中旬頃から「菜の花列車」と名付けられた特別列車が走ります。詳しくはいすみ鉄道のWEB SITE=http://www.isumirail.co.jp/で。
 新井氏(HN=埼玉の石油王)のブログhttp://sekiyu-oh.blog.so-net.ne.jp/【日々鉄道小景2】では、四季折々の美しい鉄道風景写真や、鉄道にまつわるショートストーリー掲載の他、オリジナルの鉄道カレンダーも販売されています。
 

[花鉄(はなてつ)]とは細分化されている鉄道ファンは、乗ることが好きな「乗り鉄」「旅鉄」、撮影専門の「撮り鉄」、その発車ベルや走行音のファンを「録り鉄」、駅弁を食べ歩く「食べ鉄」、女性の鉄道ファンを「鉄子」などと呼ぶことがあるそうです。そこで、私たちは各地で出会える「花」と「鉄道」が共生する素敵な風景を、勝手に「花鉄」と名付けて愛し続けることにしました。

  flower with railway vol.7