[花鉄の部屋]第5回は、福島県耶麻郡猪苗代町を走るJR磐越西線とハルジオン(春紫苑)の花とのツーショットです。

タイトル=あかべぇのお花畑散歩
撮影者=服部ひろみ
撮影地=福島県耶麻郡猪苗代町

 3月11日の東日本大震災による大津波は多くの人命を奪い、美しかったリアス式海岸に沿って運行されていた幾つものローカル線を破壊してしまいました。
 震災当初、ガソリン不足によって救出・援護活動が円滑に進まなかった中、懸命の復旧作業によっていち早く運転再開を果たしたのがJR磐越西線でした。被災地へ向け、製油所のある横浜市から上越線を通って新潟県を経由する迂回ルートで燃料を積んだ列車が走り始めたというニュースは、人々をどんなに力づけたことでしょう。実は磐越西線は2004年(平成16年)の新潟県中越地震の際にも、不通になった上越線の迂回ルートとして秋田支社や盛岡支社からの応援車両を得て、
多くの客車や臨時の貨物列車を運行し、被災地の経済復興に大きな役割を果たしていました。
 1914年(大正3年)に全通したJR磐越西線は現在、福島県郡山駅(郡山市)から会津若松駅を経由して新津駅(新潟県)の間、猪苗代湖や磐梯高原などを巡りながら175.6kmを結んでいます。昨夏に裏磐梯にある五色沼を訪れた撮影者の服部さんは、観光用の蒸気機関車[SLばんえつ物語号]やレトロ色の583系[あいづライナー]にも乗りながら旅を楽しまれたそうです。猪苗代駅の踏切付近で、撮られた今号の写真は服部さん曰く「お花畑を散歩するように軽やかに走ってきた[あかべぇ]の描かれた普通列車」。
――あまりに見慣れた花と普通の列車…大震災前の当たり前の日常が切り取られています。
ハルジオンの花言葉は「追想の愛」。
 新幹線の全線復旧も大切ですが、今日に勝る明日を信じて地道に働く人々の足として、赤字路線ながら細々と健気に走り続けてきた東北地方のローカル線の復活を信じたいと思います。
 「SLも583系もいいけれど、その土地のありふれたシーンがかえって旅の記憶として心に残ります」と語ってくれた服部さんが管理するブログ[さくらねこのPhoto散歩(http://blogs.dion.ne.jp
/sakuraneko_photoart/
)]の別館[鉄道への想いをこめて]には、私たちが愛する花と鉄道の画像が満載されています。
 

[花鉄(はなてつ)]とは細分化されている鉄道ファンは、乗ることが好きな「乗り鉄」「旅鉄」、撮影専門の「撮り鉄」、その発車ベルや走行音のファンを「録り鉄」、駅弁を食べ歩く「食べ鉄」、女性の鉄道ファンを「鉄子」などと呼ぶことがあるそうです。そこで、私たちは各地で出会える「花」と「鉄道」が共生する素敵な風景を、勝手に「花鉄」と名付けて愛し続けることにしました。

  flower with railway vol.5